NOBODY


最近の邦楽は基本的に「ダンスミュージック」の流れを汲んでいる作りだ。
主に16部音符で構成された作曲法がそれを如実に物語っている。
これがロック人間にはたまらなくおぞましい。
ロックとは基本的に8ビート、そこに様々の音楽要素が組み込まれて出来る音楽である。
その観点からすると、型にハマってりゃあとはどうでもイイという16ビート系の音楽は完全に敵。
ロックは様式美でありつつ、拡散美も含んでいるからこそ素晴らしいのだ。

で、そういった部分を日本の音楽界で最も良く表しているのがこのバンド、NOBODYだ。
「ノーボディ」ではない、「ノーバディ」である。

彼らの基本となっているのはビートルズやローリングストーンズ、ジミ・ヘンドリックスなどのブルース系ロック。
これにホンのちょっぴりポップ要素を乗っけて曲を作る。
故に、かなり日本ばなれした楽曲が多い。
特に彼等は「ブルース」的要素を好む為、かなりこなれないと受け付けない部分もあるが、一度ハマルと抜け出せない魅力を持っているのだ。

彼らのもう一つの大きな特徴は、非常に曲のバリエーションが広いところである。
あるアルバムではストレートなブルースロックを聴かせ、次のアルバムでは驚くほどポップな曲を聴かせる。
そうかと思えば泥臭いロックンロールもやってのけるし、更にはハードロックまでカッコよく纏めてしまう。
単純にバラードだロックだダンスだという作りではなく、全てのアルバムが明確な方向性を持って作られているのである。
これこそロックの原点「何でもあり」の精神であるといえよう。
ある意味で、日本で最もロックらしいロックをやっているのが彼らなのである。

さて、このバンドの結成は‘81年、ファーストアルバムは‘82年に発表されている。
この当時から彼らの特殊性は如何なく発揮され、楽曲を全編英語で歌うなど、非常にストレートな主張がなされている。
ところがセカンドアルバムになると、一転して非常にポップなロックを聴かせており、彼らの懐広さを感じさせる。
以降、続々とアルバムは発表されたが、基本的には彼ら自身のアルバムは「通好み」の範疇に留まっていると言って良いだろう。
彼らの真骨頂は、違う方面でも如何なく発揮されているのだ。

吉川 晃司「モニカ」「You Gotta Chance」「雨上がりの非常階段」
アン・ルイス「LUV-YA」「六本木心中」「I Love Youより愛してる」
HOUND DOG「浮気なパレットキャット」「スクール・デイズ」
Show-ya
ONE WAY HEART
浅香 唯「泣かないで MY HEART
柳 ジョージ「HURRY UP, BABY!」

おまけで小泉 今日子「風のマジカル (ドラえもんのテーマ)」

断っておくが、これは別にヒットパレードではない。
これらの曲の作曲者は、全て彼らなのである。
これで彼らの仕事のおよそ1/25といったところか。
そう、彼等は外部ライターとしての一面も持ち、それがチャートアクションに巨大な影響を与える事でも有名なのだ。
何せ、デビューと同時に作曲家としての仕事を始めたくらいなのだから、その懐の広さは推して知るべし。
これらの実に日本的なポップセンスと、一方では泥臭くもカッコイイブルースロックが同居している所が素晴らしい。

これだけ幅広い分野を自分のスタイルで集約できるミュージシャンは、日本と限定せずともそう多くはない。
彼らの奥の深さはこのスタイルの広さにあるのだ。
ここは是非、彼らの曲を聴いて欲しい。
そうすれば本当の意味での「楽曲の素晴らしさ」が分かる筈だ。

*補足:ハードロックってどういうもの? と思う方は、「TRAX」というアルバムを買ってみると良いでしょう。最後の曲「MOVING UP」を聴けばそれが回答になります。これはベストアルバムでもあるので、非常に効果的です。

お勧めアルバム一覧

ポップが好きなら「POP GEAR」&「RESTLESS HEART」

ロックが好きなら「FROM A WINDOW」&「ON!」

ブルースが好きなら「HALF A BOY. HALF A MAN」&「BAD RHYME」


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