メギドの日

自堕落適当攻撃的日記。
上が旧くて下が新しいヤツです。


2002年 8月 12日

夏コミ、今年も恙無く終了。
滅茶苦茶暑かった。

さて、今年は行くべき場所を始めから絞りまくっていたので、非常に楽に回ることがでました。
夏コミ期間途中で松山直樹さんの夏コミ参加情報をキャッチ、急遽スペースに向かうも、残念ながら既に午後になっていたためにお会いできなかったのが心残りですね。
それ以外、全くと言っていいほど不満のない、またトラブルのない夏コミだったと言えるかと思います。
ちょっとした手違いで真っ黒に日焼けはしちまったがなァ。

さて、今回は俺が一方的にファンをさせて頂いている「くらっしゅハウス」の比良坂真琴さんとお会いでき、ご挨拶をすることもできました。
手土産として抱えて行ったカステラ、お口に合いましたでしょうか?
結構圧倒されちゃったのですが、比良坂さんご本人は背の高い、スッキリした顔立ちの好青年でらっしゃいました。
何と言うか、女の子に、モテそう、それも、すっごく。
画も可愛いくて上手いし、何か天の配剤の理不尽さにやるせなさ97%と3%ばかりの僻みが沸いてきました。
因みに、購入させて頂いた2冊、ほのぼの系で安心して読めたんですが、時々効いている小技に笑いました。
名雪の「コーホー」とサユリス(←別のサイトのネタです、気にしないで下さい)さゆりんの鼻血はサイコーです。
さゆりん団扇の方も有効活用させて頂いております。

さて、1日経過して12日。

俺にとっては、夏コミよりもこの日が本番です。
何故か。
それは、遠路遥々やって来られたお客様を、ついにCMCにご招待できる日だからです。
思えば始めて「CMCにご案内しますよ」と言ったのは昨年の冬の出来事。
本来5月に果たされる筈だったその約束は散々延期され、半年以上も経過したこの日ついに、ついに果たされる時がやってきたのである。
そのお客様とは……。
いやもう、既に察しがついている方もいそうだけど、「ShootOuts」のCuvieさんです。
この手のお話では、既にゲストはこの方で決定している感がありますね。

集合時間は12時半、秋葉原駅から既に任務(ミッション)スタートだ。
しかし、いきなり俺は5分の遅刻、焦りながらも秋葉原のホームに電車が滑り込んだところで、きゅーさんからの電話が。
駅前のコンビニで待ち合わせたのだが、何故かきゅーさんの姿はなかった。
電話連絡をとりながら確認すると、何故か駅の反対側からきゅーさんが姿を現した(笑)。
どうやら待ち合わせ指定に使っていたコンビニが、駅の反対側にもあったらしい。

さて、全員集合したところで早速CMCへ。
CMCのエレベーターの扉を前に早速一言。

「せっかくだから俺はこのエレベーターを選ぶぜ!」

CMCは異常な混み方で、まるで休日のようだった。
考えてみれば既に盆休みで、しかも夏休み。
混むのも当たり前だな。
しかし、予約をしっかり入れておいたこちらには全くの問題なし。
席が空くのを待っている客を尻目に、予約席にどっかり腰掛ける。

我々が予約したのは1900円コースのパーティプランなのだが、このコースでハッキリ言って充分過ぎるくらい。
出てくる料理が食いきれなかった。
打ち合わせが終わってからは、適当に飯を食らいつつ適当に駄弁って適当に喋る。
今回、話題で出た中で印象的だったのはカーマゲ。
俺と友人Zがカーマゲの説明をすると、きゅーさん目を輝かせながら

「めっちゃやりたいです」

女性でカーマゲに興味を持たれた人を始めてみました(笑)。
マシン購入の暁には、是非やりまくって下さい。

で、会計はきゅーさんに随分肩代わりしてもらった我々。
俺に至っては前日にもお茶代を出して頂いているので、まさに半分以上ヒモ。
その上、この日は殆ど払ってもらった形になっちゃった訳だ。

滅茶苦茶カッコ悪ィよ、俺。

そんなこんなで解散した後は、用事を抱えていた俺は素直に帰宅。
ちょっとラストがさっぱりしすぎたが、有意義な時間を過ごせた。

毎度のことですが、きゅーさん、誠にありがとうございました。
すごく楽しかったです。

次回は絶対こっちが奢るぞ。

 

今年は夏コミ自体でも不愉快な思いはなかったし、非常に充実したお祭りだった。
毎年こうあってくれればありがたいんだけどね。


2002年 8月19日

17日はスプルーオフと銘打ってSPooKies ROOM!の管理者のキョウジさんと秋葉原で遊び倒した訳だが。
その感想を一言で述べるならば……。

 

 

 

生ウチコシ

 

 

 

あまりにも面白すぎて1日中笑ってたような気がする。
顎が痛くなった。

取り敢えず午後1時にトラブルもなく集合。
遥々日本海側からやって来られたyo-zinさん含め、合計4人のこじんまりしたオフ会の始まりである。

まずは予定通りに格闘ゲーム大会から始まった訳だが、密かに予想していた通り、最弱は俺で決定。
昇竜拳コマンドどころか波動拳コマンドすら完全に出せなくなってるんだから仕方ないわな。
ま、この結果はやる前からわかってたことだからショックでもなんでもないが。

続いて喫茶店にてダベリモード発動。
この時までお互いに何となく遠慮のようなものもあったのだが、腰を落ち着けてからはリミッター完全解除。
全員がジョジョネタに精通しているという安心感からか、留まることなくジョジョ話に花が咲きまくる。
とにかく滅多にないチャンス、ここぞとばかりにジョジョカノについての質問が飛ぶ訳だが、キョウジさんは書く方だけでなく、話す方もメチャメチャ面白かった。
なんであんな発想ができるのか色々と探ってみたが、出た結論は「俺達とはレベルが違う」って事ぐらいだった。
このあたりの細かい話を聞くと凄え面白いのだが、まあ、こうやって文字列にして伝えられるようなものじゃないので、来れなかった、或いは来なかったことを悔やんでくれ。

最後は飲み屋へ。
当然酒を注文した訳だが、乾杯の音頭はいつものアレ。

「「「「酒! 飲まずにはいられないッ!」」」」

乾杯の音頭で全員揃ったのは始めてだったので、感動してしまった。
さて、飲みながらもトークは続く訳だが、このオフ会の本番はここからだった。
最初のうちこそフツーにジョジョネタ(それでも既に常軌は逸していたが)の応酬で済んでいたのだが、話の流れは何時の間にか名物男・ウチコシくんにシフトしていくことに。
ここからキョウジさんが実演などを含めて色々とウチコシくん話をしてくれたのだが、もう大爆笑。
まともに呼吸できなくなるくらい笑った。
つーかいつ顎が外れてもおかしくないくらいに笑い続け、腹筋は引き攣って痺れるわ顎の関節は痛くなるわ、お花畑が見えそうになった。

で、午後9時半にお開きになった訳だが、取り敢えず解散の挨拶も当然ジョジョネタ。
駅構内で平然とそんなことやってられる自分たちを誇りに思うぜ。

そんなこんなで滅茶苦茶楽しい時間を過ごすことができた。
という訳で、こんなオフ会ならまたやりたいという訳で、いずれ第2回を絶対やるべきだな。
次こそエレベーターに乗ったら後ろ向いたままでいるぞ。


2002年 9月16日

やはりネットゲーというヤツは物凄い魔力を秘めているものだ。
ラグナロク・オンライン(以下ROと記す)にはまりっぱなしになってしまい、1日の睡眠時間は三時間前後に減退。
暇さえあれば今後の行動予定を練っており、仕事もロクに手につかないという醜態だ。
駄目駄目じゃん、我ながら。

しかし、駄目人間であることを強調しててもなにも建設的な結果が生まれないのは明白なので、せっかくだからネットゲーのいいところを書いて礼賛する事で自分の駄目さを隠すテスト。
絶対失敗するけどな。

まずは何を差し置いても挙げておきたいのは「コミュニケーション」である。
ROの場合、最初は一人きりでプレイする事が多いので、その心細さと言ったら、そりゃあもう大変なものだ。
周りはみんなバシバシとやってるのに、こちらは全然ダメージが通らなくて、あっという間に死亡するし。
行くべき場所とか、欲しい武器とかの情報も全然分からないし。

しかし。
ROではその心細さを補ってくれるコミュニケーション機能が充実しているのである。

分からないことがあれば気軽に声を掛けることが可能で、訊けば、みんな大抵の事は親切に回答してくれる。
勿論、雑談も可能である。
同じゲームをやっているわけだし、みんな通った同じ道だから、話が弾む事この上ない。
勿論、俺も話しかけられれば気軽に答えるしな。

更に、通常のフィールドを離れてダンジョンに入るとこの傾向はより顕著になる。

通常のフィールドと違い、ダンジョンという閉鎖された空間にいるからかも知れないが、連帯感が生まれやすく、情報などを親切に教えてくれる人が多いのだ。
俺は結構友達登録した人がいるが、それはほとんどダンジョンでできた知りあいばかりである。
それに、ダンジョンは敵が厄介な場合が多いので、お互いに助け合うという姿勢が生まれることも多々ある。
これを切っ掛けにして、全然知らなかった人たちと色々な場面で協力し合える仲になっていける訳だ。
俺も何度も助けられてきたし、自分が強くなってからは結構頻繁に人助けしたりもしている。
アイテム交換で珍品をゲットしたこともあるし、今の装備品の半分はこういった「仲間」の強力なしでは手に入らなかっただろう。
俺もつい先日ついに上級職になったから、今後はより積極的に人を助けていけたら、と思う。

特にアコたんプリたん(笑)。

さて、これだけコミュニケーション方面に特化していると、当然他人に聞かれたくない会話機能もある訳だ。
チャットを立てて覗かれないようにすることも可能だし、パーティや友人と1対1での会話も勿論可能。
ゲームを楽しむというより、ゲームの名を借りたロビーのようなものだ。
レベルが上がらなくても、強くならなくても、この一点だけでも充分に楽しめる要素のあるゲームなのである。

 

 

 

 

 

 

きちんと繋がればな。

 

いい加減ログイン鯖整備してくれ…


2002年 9月 27日

トップにもちらりと書いたが、13日に大恐竜博という奴にいって来た。
「行った」という人の殆どが「子供向けだな」という発言をしていたんだが、なかなかどうして。
確かに展示物の説明やら、グッズなどを見ると子供向けであることは否定できないが、いい年をした大人でも十分楽しめるし、堪能できる博物展示会だったと俺は断言する。

特に収穫だったのが、ギガノトサウルスの全身骨格があったことだ。
ティラノサウルスが頭骨しかなかったのに対し、随分と優遇された扱いだったといってもいい。
その大きさと迫力には流石に度肝を抜かれる思いだったね。

尤も、貴重だと思ったのは「スコミムス」の骨格なんだけどね。

さて、昔恐竜少年だった人間としては、恐竜のイメージというと主に二つあるといえるだろう。
ブロントサウルスのような、陸上闊歩型の巨大草食竜。
これに対してティラノサウルスのような大型肉食竜。
この二つが俺の「恐竜」というもののイメージを固めていた。

今回のこの博物展示会の売り物は、「地上最大」と言われるセイスモサウルスの全身骨格像だ。
全長は35メートルに及び、これは地球上最大といわれる鯨類よりも長い。
別に大袈裟な話じゃなく、ただ呆気に取られてみているしかない大きさだった。
あんな巨大な物が歩いていたんだから、地球という天体は謎が多い天体だ。

さて、人間もそうだが、体重が増えると動きは鈍くなる。
体重が増えた状態で無理に素早く動こうとすると、急激に体温が上がり、息が苦しくなる。
当然、これは生き物全てに適用される法則で、巨大な動物ほど動きは鈍い。
早く動くと、体温が上がりすぎて生命が危険だからだ。
さらに、運動力の低下からくる危険は計り知れないものがあると言える。
巨体とはそれだけでも有利だと思われがちだが、一報では運動力の著しい低下を招き、身を危険に晒しかねないのだ。
俺が思うに、彼ら巨大草食竜が泥沼などに嵌った場合、抜け出すだけの運動力は持っていなかったのではないか。
人間で言えば、側溝に嵌って溺れ死ぬようなものだ。
泥沼なんてそこらへんにあっただろうし、身近な危険は、小型の恐竜よりもむしろ多く存在したのではないか。
そもそも、あれだけの巨体が地上にいる効率の悪さと言ったら。
重力の制限がありすぎる地上では、あの巨体はまさに自分を縛るものでしかないはずだ。
なのになぜ、彼らはあそこまで巨大化したのか。

あくまで俺の勝手な想像だが、昔の地球は、今よりも重力が軽かったのではないだろうか。

そんなバカな、と思われるかもしれないが、ありえないとは言えないだろう。
例えば地球の自転は、今よりももっと早かった。
自転が速ければ遠心力が外向きのベクトルに働くから、地上にいる生き物は幾分負担が軽くなる。
当然、今よりも巨大化していくことも可能だったはずだ。

さて、ユカタン半島沖に、約6500万年前に直径10キロメートルの隕石が激突したのは有名な話だ。
この隕石が地軸を狂わせ、地球の自転を弱めた、とは考えられないだろうか。
無論、隕石の引き起こした天候不順も要因には違いあるまい。
だが、同時に起こった重力の増大が、大絶滅を引き起こした、というのも面白いと思うんだが、如何なものか。


2002年 10月 1日

今回はちょっと変わった趣向で、軽い小説なんか書いてみる、日記で。
本格的に書くほどのものでもないし、思いつきでしかない話なので、こんな形態を取ってみる。
先にバラしておくけど、ラグナロクでPTプレイやってて思いついた話ね。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

※ 暗殺者は祈りを背負い

 その男が生まれた家庭は裕福だった。
 しかし、育った場所は汚く、最悪の環境だった。下水のネズミもかくやという穢れきった環境で、男は育った。そうなった理由は簡単だった。男の家庭は、理不尽な突然の暴力で、あっという間に崩壊したのだ。
 突然の襲撃者たちは、男が少年だった頃になんの前触れもなく団欒の場に現れ、奪い、姦し、殺し尽くして去って行った。
 母と姉は男の目の前で犯され、そのまま殺された。
 父は殺さない程度に全身を切り刻まれ、家族が一人ずつ死んでいく姿を見せ付けられ、絶望の果てに息絶えた。
 そして男は右目を奪われ、胸に刃を突き立てられた。
 蛮行の宴が幕を閉じると、炎が男の住んでいた家を包み、全てを焼き尽くした。

 だが、生きたまま焼き殺されるはずだった男は生き残った。
 雨が降ったのだ。
 全身に火傷を負いながらも、男は生き延びた。
 こうして、蛮行と陵辱は数名の死者と、たった一人の復讐者を作り出した――――――。

 男は15歳まで、しぶとく生きてきた。盗み、脅し、騙し、傷つけ、最底辺の行き方で生き抜いて来た。だが、どんなに悪行を重ねてもただ一つ、殺しだけは絶対にやらなかった。
 彼の刃を突き立てるべき相手は、決まっていたからだ。
 その生活と精神の荒廃から、当然のように彼はシーフ(盗賊)と呼ばれる集団に属するようになっていった。その集団で彼が頭角を現すまで、然程の時間はかからなかった。
 だが、彼は盗賊としての生活に快楽や満足を覚えていた訳ではなかった。彼にとって、今の生活は力をつけるための通過点に過ぎない。彼の生きる目的はただ一つ、ある怪物の生命を確実に奪い取る事だったから。

 盗賊とはいえ、闘いと無縁である訳ではない。不慮の遭遇もあるし、望まぬ闘争に巻き込まれる事もある。場合によっては追っ手がかかり、多数の敵に囲まれる事もありうる。
 あらゆる場面を想定した修練が行われ、技術を習得していかねばならない。大概は、そこらへんをうろついているモンスターを相手とした闘いを積み重ねる事によって実戦的な修練が行われる。この方法論は騎士であろうと、或いは僧侶であろうと変わらない。特にダンジョンと呼ばれる特別な拠点は、巣食っているモンスターの特性などから絶好の修練場と目されている。
 彼がその少女に出会ったのは、そんなダンジョンの一つであった。

 少女を助けたのは単なる気紛れに過ぎない、と彼自身は思っている。
 アコライト(聖職者)の恰好をしたその少女は、多数の下級モンスターに絡まれて四苦八苦していた。最初こそ黙って見ていただけで、少女の手際の悪さにいらいらしたものを覚えた彼だったが、不意に、モンスター達に苦しめられる彼女の姿に母と姉の姿が重なった。
 気がつけば、彼は少女とモンスターの間に割って入っていた。
 襲いかかるモンスター達を手際よく処理していく。弱い奴から叩き、相手の囲みに穴をあける。威力の高いと思われる奴からの攻撃を回避するためにも、弱い奴から片付けていくのは鉄則だ。一匹ずつ確実にモンスターを処理し、退路を確保する。
 退路の確保を確認すると、彼は唖然とする少女の襟首を掴み、放り投げるように作り上げた退路から安全圏に逃がした。後は追ってくる奴を一匹ずつ処理していけばいい。
 全てのカタがつき、モンスター達の死骸が足元に転がるまで僅かに30秒前後の出来事だった。
 この間、彼は彼自身の行動を驚くほど醒めた目で、第三者のように見下ろしていた。

「ありがとう、助けてくれて」

 と、少女は言った。
 花が咲くような、暗いダンジョンの中に光が差すような眩しい笑顔だった。

「ああ」

 と、ぶっきらぼうに答えながらその場を立ち去ろうとして、

「あ、ちょっと待って」

 少女に呼び止められた。
 例の眩しい笑顔で、彼女は彼に名を尋ねた。

「名前なんてどうでもいい、捨てた」

 不機嫌そうに答える彼に―――事実、いきなり名前を訊かれたりして不機嫌だったのだが―――彼女は、それなら、と前置きして、

「名も知らぬ冒険者たる少年よ、貴方の前に神の祝福ありますように」

 洗礼か何かのつもりか、大仰な祈りを捧げて、何かの魔法をかけてくれた。
 魔法の効果は有り難かったが、少女の「少年」という言い方にはカチンと来たし、それ以上に「神の祝福」など笑止の極みだった。そんなものが存在するのであれば、あの時になぜ幸せだった家庭が破壊されなければならなかったのか。
 そう思ったが、口には出さず、彼は少女を一瞥してから黙って背を向けた。
 印象的な、眩しい笑顔が暫くの間脳裏に焼き付いていたが、ダンジョンの奥でモンスター達と戦ううちにやがてそれも薄れていった。

時は流れる―――――――

 5年が経過した。
 少年は少年ではなくなり、一介の盗賊でもなくなった。修練を積み、戦闘技術に磨きをかけ、彼は今や暗殺者として生きていた。
 尤も、彼は暗殺などしたことは一度もなかった。彼が命を刈り取るべき相手は、既に決まっていたからだ。それ以外の相手から、無駄に命を奪うような真似は彼はしたくなかった。それでは、彼の暖かな家族を破壊した連中と同じではないか。そこまで自分を堕とすことは、彼にはできなかった。闇に生きる者にとっては、己のもつ矜持だけが全てであり、そして彼の矜持はそこにあった。
 暗殺者にも仲間はいないわけではない。彼は常に仲間に笑われたし、先輩に失笑も買ったが、己の生き方は頑として曲げなかった。彼にしてみれば、技術はあくまでも技術に過ぎない。彼は「暗殺者」という生き物を「技術」として捉えていた。それは技術であって、生き様ではない。彼の生き様はとうの昔に定まっていて、それは「復讐者」であった。
 それを忘れたが最後、彼は彼でなくなる事を熟知していた。

 暗殺者としての修練も、勿論有る。と言うよりも、技術は常に磨きをかけなければ錆びていく一方なのだ。体が技術を覚え切り、頭で考えるよりも早く反応するようになるまで、修練を怠る事は許されない。
 ダンジョンの前まで彼がやってきた時だった。

「お久し振りです、あの時はありがとう」

 突然だった。声を掛けられたのが自分だとは、最初は思わなかった。振り返ると、そこには少女が立っていた。自分がかつてダンジョンで助けた少女だと気がつくまで、暫くかかった。
 眩しい笑顔はより輝きを増していた。5年前はまだあどけなさを残していたその容姿は、今ははっとするような美しさをたたえている。
 だが、彼は人の外面や美しさにとらわれる事はなかった。

「ああ、あんたか」

「はい、あの時はありがとうございました」

「礼なんか要らん、気紛れだったからな」

 それだけ言って立ち去ろうとすると、少女は何が嬉しいのか、笑顔を絶やさずに後をついてきた。この行動は意外と言うよりも、意表を突かれたといってもよかった。

「なんのつもりだ?」

「ええ、これからダンジョンに行くのでしょう?」

「そうだが」

「ええ、ですから、前回助けて頂いたお礼に、今度は私が貴方を助けちゃいます」

 そう言って、腕まくりをして力を入れた。勿論、力瘤など少しもできなかった。
 彼は少女の正気を疑った。今回入ろうとしてるダンジョンは、前回彼が彼女を助けたダンジョンよりもはるかに手強いモンスターばかりがいるのだ。まして自分は、この少女に助けられるほど弱くはない。

「本気、というより正気か? ここはあんたが入るようなところじゃあねえ。一介の駆出しアコライトがどうにかなるダンジョンじゃねえぞ」

「あ、それは馬鹿にしすぎです。私も5年前からはずっと成長しましたから」

 少女はちょっと膨れた表情をして見せたが、彼はそのおどけには乗らなかった。
 目を細めて少女を睨みつける。眼光が鋭くなった。

「ついてくるのは勝手でどうこう言わん。だが、2度は助けないからな。自分の命には自分で責任を持てよ」

「ええ、勿論です」

 彼の鋭い眼光を真正面から受け止め、それでも彼女の笑顔は全く崩れなかった。その度胸というか、自分の雰囲気を維持する術には、彼は素直に脱帽しておいた。

 ダンジョンの中は薄暗い。
 目が暗闇に慣れてくると、あちこちにモンスターの死骸やら、かつて躯になった冒険者たちの遺品が転がっているのが見えてくる。薄ら寒くなってくる光景だが、彼はそうは思わない。そうなる前に逃げるのも戦闘技術だ、彼らはそのてんが未熟だったに過ぎない。当然の結果だ、と彼は思っている。
 だから、動けなくなるほどに疲弊しきったほかの冒険者たちには目もくれず、先に進んでいく。
 だが、彼の後をついてくる少女は違った。
 いちいち怪我人の前で立ち止まり、その傷を魔法によって癒していく。その少女を見る冒険者たちの目は、まるで天使でも見ているかのようだった。
 その目つきを、彼は馬鹿馬鹿しい、と思う。
 構わず先に進もうとしても、彼の前にはモンスターたちが湧いて出てきては足止めするので、結果的には同行する形のままでダンジョンの奥に進んでいくことになった。

「貴方はなんのために戦うのですか?」

「そんなことはそこらのナイトにでも訊け」

 ダンジョンの奥で岩に腰掛け、休息を兼ねてリンゴをかじっていた彼に、少女が訊ねてきた。彼としては説明するのも御免蒙りたい話だったし、無視しようとした。
 だが、少女は、思いのほかしぶとかった。

「私は貴方に訊いているのです」

 そう言った彼女の表情は、始めて見る表情だった。笑顔はそこになかった。

「始めて会った時からずっと思ってました。あなたは貴方の周りの何も見ていません、貴方が見ているものは、あなたのずっと先に有るものです、それは絶対に手が届かないのに。あなた自身、それが分かっているのに。貴方の目は『今』も『未来』も見ていません、見ているのは『願望』だけ……」

 彼女が彼に語りかけていない事は明白だった。

「やめろ、聞きたくねえ、そんな話」

 だが、彼女は止まろうとはしなかった。

「あなたの過去に何があったのかは知りません。でも、今の貴方にはなんの救いも有りません。勿論、貴方の未来にも。このままいけば、貴方は破滅するだけ、何も残らない」

「やめろと言っている」

 声は大きくなかったが、言葉が鋭くなった。

「貴方のような人を放っておく事は、私にはできません、私は神に仕える者として……」

 「神」と言う言葉が彼女の口から出た瞬間、彼の中で彼を抑えていたものが失われた。彼女をその場に押し倒し、地面に押し付けた。抵抗はなかったが、押え付けている彼女の手が、小さく震えている事に気がついた。

「いいか、俺の前で“神”という単語を出すんじゃねえ。反吐が出る、ムカムカするんだよ、そんなものがいるんなら、俺はこんな所でこんな事はしてねえんだ」

「可哀想な人、傷を癒す事を放棄して、消えない傷だと諦めて、破滅のみを望むのですか」

「それ以上喋るな、犯すぞ」

 “殺す”と言う単語より、女に対しては“犯す”という言葉のほうが効果が高い、と彼は経験から知っていた。尤も、そう言って本当に犯したことは、彼はなかった。最初からその気がないのが当然だった。
 唯一の例外は今回だけで、これ以上彼女の言葉を聞いていたら、本当に犯してしまいそうだった。目が血走っているだろうな、と彼は他人事のように思った。
 そんな彼を気丈に睨み返すと、彼女は、

「構いません、やりたければやりなさい。そして知りなさい、あなたがどれほど危ういか、壊れやすいのか」

「このアマ……」

「どうしたのですか、怖いのですか。私は怖くありません、私には常に神の加護が……」

「なら、神の加護とやらで、今から自分に起こる事から自分を救ってみろ!」

 完璧な陵辱だった。
 彼自身、何をしているのかわからなかった。

 犯す。

 ただ、衝動と欲望に任せ、貪り続けた。
 純潔を奪い、尊厳を踏み躙り、蹂躙し、己の欲するままに振舞う。

 犯す。

 自分が堕ちたことを、彼は奥底で悟っていた。
 彼自身が最も憎んでいた連中と、これでは何も変わらない。

 犯す。

 彼女はただ耐えていた。
 痛みと屈辱とに、唇を噛んで耐え続けていた。

 犯す。

 破り捨てられた法衣の上で、彼女を貪りながら、何度も彼は放った。
 彼女は一言も発せず、それを黙って受け止めた。
 時折、彼女の唇の隙間から、祈りの言葉が漏れた。
 何を祈っているのか、それは分からなかった。

 怖くない筈がなかった。その証拠に、彼が押さえ付けていた腕は、ずっと小刻みに震えていた。
 いや、彼女が彼についてこのダンジョンにはいって来た時から、ずっと彼女は恐怖に耐えてきたのだろう。
 全てが終わった時、のろのろと体を起こした彼に、彼女は言った。

「気は………済みましたか……?」

 言葉に力はなかったが、気丈な光をたたえた眼光は失われていたなかった。
 返す言葉は彼にはなかった。
 それでも、ただ一言だけは言わなければならなかった。それすら言葉にできないのなら、彼は、最も憎んでいた連中以下だという事になる。

「済まなかった………許してもらえるとは思わないが………………」

「ええ、許しません……こんな酷い事……。だから、責任を取ってもらいます」

「責任?」

「ええ、これから先は私とパーティを組んでもらいます。それで許してあげます」

 彼は思わず彼女の顔をまじまじと見た。笑顔が戻っていた。
 こんな時になんで笑っていられるのか、彼は不思議でしょうがなかった。

「俺が……憎くないのか?」

「私は聖職者ですよ? 人を救う事は有っても、憎む事なんてありません」

 そう言って笑顔を浮かべている彼女の目尻には、光るものがあった。安堵の所為か、それとも別の理由か、彼女は涙が流れる事を堪えているだけだった。
 彼の完敗だった。
 復讐に固執しすぎた余り、彼は何も見えなくなっていた。己の実力も、己の置かれた精神的な位置も、何もかも見失って彷徨していた。
 そうなのだ、彼だけで何もかも上手くいく訳がない。
 だが、一人で無理な事でも二人なら、二人で無理なら三人で当たればいい。彼は、事を為すために力を合わせるという、当たり前の事実を始めて悟った。

 彼女とのパーティを組んでからの彼の成長は目覚しかった。モンスター相手に磨かれた技は達人の域に達し、体が勝手に反応するレベルに到達するまで時間はかからなかった。
 今まで、彼一人では戦うのに難があった相手も、二人の呼吸が合えば、楽に片付く事も知った。
 戦闘で傷を負えば、彼女が癒してくれる。
 彼も、彼女がピンチなれば、飛び出していって助けた。

「助かりました」

 そう言って、彼女はあの笑顔を浮かべてくれる。その笑顔に、今まで感じた事のないものを感じて、彼は戸惑った。
 しかし、そこに不快感はなかった。
 最初は義務感から彼女に助けをいれていた彼だったが、何時の間にか、彼女の笑顔を見たくて助けている事に、彼自身気がついてはいない。

更に時は流れる―――――

 彼のパーティは大きく育っていた。頼もしいウィザードや、流れ者の騎士が加わって戦力的には充実していった。彼女は正式にプリ―ストとして洗礼を受け、名実ともに貴重な戦力になった。
 敵を攻撃するウィザード、戦闘の時に盾になる騎士、そして彼は敵をかき回し、分断する。彼女は僧侶としての魔法で味方をサポートし、時には受けた傷を癒す。
 役割分担も決まり、息も合ってきた頃、彼は「仲間」と始めて呼べるパーティメンバーに、始めて自分の過去を明かした。
だが、辛い過去を持っていたのは彼だけではなかったのだ。
 そんな当たり前の事も、彼は気づかないでいたのだ。いかに自分が世界を狭めていたのか、彼は改めて思い知らされることになった。
 彼女もまた、孤児として育ってきた過去を持っていた。親の顔も知らず、育ての親に虐待されながらも、今の彼女の笑顔があることを知って、彼は頭が下がる思いだった。
 辛い思い出もなく、安穏と生きている人間などいないのだ。その事を、彼は知った。

 パーティの呼吸も完璧に合ってきた。
 アイコンタクトすらなしで互いの呼吸やタイミングを計れるようになってきた今、彼は決心した。

 両親と、姉の仇を討とう。

 だが、この敵討ちにだけは、彼は拘りがあった。
 どうしても彼一人で仇を討ちたかった。
 勿論、無理はしないという前提の元にだ。戦いを挑むのはいいが、それで死んでしまっては意味がない。「敵討ち」は相手の息の根を止める事が目的なのだ。
 返り討ちに逢っていては全く意味を為さない。だから、無理はしない。危険になったら逃げる。

 その事を彼は、彼女にだけ話した。
 他のメンバーに話さなかったのは信頼していないからではない、絶対に承服してくれない事が分かっていたからだ。それも、危険であるが故に承服しないのではない、義理堅く、情にあついからこそ承服しないのだ。

「……止めても、行くのでしょう?」

 彼女は、例の笑顔で言った。その笑顔がやや曇っている事に、彼は気がついただろうか。

「私は貴方の過去を知っています。ですから、聖職にあるものとして、一度だけ、神の教えに背きます。全ての生きとし生けるものの平等を説く、神の教えに反して、私は貴方に言います。貴方の敵討ちが、成就しますように」

「………ありがとう」

 お礼を言うなんて、彼が覚えている限り、初めての事だったかもしれなかった。
 自然に頭が下がった。

「その代わり、絶対に死なないで。生きて帰ってきて……」

 彼女の笑顔が崩れていく。
 そして、彼には為す術はなかった。言葉が無力である事は、彼にでも解る事だった。

「死んだら……許さないから…………。私にした事……忘れてないんだからね……………」

 そう言って、彼女は優しく微笑んだ。
 頬に涙が光っていた。

 綺麗だ、と思った。

 思った時には、彼女を抱き寄せていた。
 遅すぎる恋を、彼は始めて知った。

※              ※              ※

 “そいつ“はダンジョンの地下にいた―――――――。
 彼が捜し求めていた相手。
 彼から全てを奪った相手、そして、新たな人生をも与えた相手。
 大量の悪魔を従えた羊頭獣身の怪物――――――――――――。

 バフォメット

 戦いは、言葉もなく始まる。
 無駄にベラベラ喋る趣味は彼にはないし、第一こいつに言葉が通じるはずもなかった。
 バフォメットは動かない。奥に鎮座したまま、身じろぎもせずに戦況を見つめている。
 彼は縦横無尽に動きまわり、カタールを振るう。
 バフォメットを取り巻く小物達を片付けながら接近していく。

 だが――――――――。

 届かない。
 次々と湧き出してくる悪魔どもに囲まれ、傷を受けていく。
 退路を確保するので精一杯だ。
 戦いながらも、視線の先にバフォメットがいる。距離にしてほんの15メートルほど、それが無限の距離として、彼の前に横たわり続けている。
 バフォメットの口元が歪んだ。
 哄ったのだ。
 頭に血が上りかけたが、すぐに冷静になる。

 死なない。
 死ねない。

 冷静さを欠いたら死ぬ――――――。

 だが、圧倒的な数の前には押し切られるのも時間の問題だった。
 一匹が背後に回りこんできた。
 即座に切り払う。退路を確保するためだ。
 ゾクリ、とした。
 死の旋律を聞いた。
 正面の敵に一瞬だけ見せた、しかし絶対的な隙。
 振りかえらずに、そのまま前に跳ぶ。
 背中に激痛が走った。
 バランスが崩れる。
 転倒は辛うじて避けた。
 だが、振り返った瞬間、終わりがそこにあった。
 振りかぶられた死神の鎌。

 やられる―――――――――。

 ごめん、という言葉が自然に口から出た。
 だが、死神の鎌は振り下ろされる前に、巨大な炎の壁に弾き飛ばされた。
 群がっていた悪魔達が粉砕され、次々にチリと化していく。

 ああ。

 来てくれたんだ。
 彼の背中に暖かい手が触れていた。
 痛みが退いて行く。

「全く、水臭いぜ」

「おうよ、一人でお宝ゲットしようなんざ、太ェ野郎だぜ」

 聞き慣れた、笑い声混じりの声。
 彼の「仲間」だった。

「おっと、彼女に怒るなよ、俺達が無理矢理聞き出したんだからな」

「そうそう、聞いたら一人でバフォをやるって息巻いてたらしいじゃねえか。そんな抜け駆けは許さねえぞ」

 笑顔と口調のなかに、彼に対する心配が滲み出ていた。
 ああ、彼らが「仲間」でよかった。
 心の底からそう思った。
 彼の背中を癒していた暖かな腕は、何時の間にか彼を抱き締めるように優しく包んでいた。
 その掌を優しく握り締め、彼は一言だけ呟いた。

 ありがとう

 後は早かった。
 炎の壁が取り巻きどもを一掃すると、バフォメットとの直接対決が待っていた。総員で攻撃を加え、見る見るうちにバフォメットの身体が鮮血に染まっていく。
 この悪魔が人間と同じ血の色をしている事が気に入らない。
 止めてやる。
 こいつの全てを止めてやる。
 オートカウンターを食らい、バフォメットがよろけた。
 短いが絶対的な隙。

 跳び込んだ。

 この時のために磨いた、必殺の連撃。
 カタールが唸りを上げ、とどめのソニックブロウが炸裂した―――――――。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

つーワケで、ラグナロクやってて思いついた小説。
思ってたより長くなってビックリだ。
主題は何かというと、要するにパーティプレイは面白いよ、と。
なんでこんなもん思いついたかってーと、CARUTEさんがアコライトやってて、俺がアサシンやってるんだけど、暗殺者と聖職者のコンビかー、職業的には相性悪いなー、などと考えた事に端を発しています。
尤も、プレイヤー的には全く関係ありませんがね。
CARUTEさんさん曰く、プレイヤー的には俺達のPTはジョースター一行だし。

全く以って同意。

ちなみに、こういうもの書くと必ず勘違いする奴が出てくるから予め断っておくけど、俺とCARUTEさんはこういう関係じゃないからな。
確かに一部でゲーム中にあった事をそのまま流用したりはしたけど、それを元にヘンな勘繰りはしないでくれや。
第一、ゲームのほうではこんなハードなキャラ設定した覚えはないしな。

更にもう一つ、最後の戦闘の件とかは適当に創造(想像ではない)しただけ。
実際にバフォにあったら、動かないなんて事はなく一直線に襲いかかってきます。
更にもう一つ言っておくと、バフォの取り巻きはバフォメットジュニアという奴で、バフォメットの息子みたいな奴です。
で、最後のおまけにもう一つ言っておくと、ソニックブロウは使えません(汗)。


 

やれやれ、過去ログ置き場はここだぜ、ドララー。