奇々怪々
レアなゲームと言うものは、確実に世の中に存在している。
そこには「何これ?」と言うものから「うおおっ!こいつはスゲえ!!」と言いたくなるものまで、様々なレベルの代物が転がっている。
ここで取り上げる「奇々怪々」というゲームは今でこそレアゲームであるが、発表されたときの爆発的な人気は、間違いなく「名作」の名に匹敵するものだった。
とてもユニークで、面白かったからである。
巫女の衣装に身を包み、お札とお払いを武器に戦う主人公。
どっからどう見ても、可愛いとしか思えない敵キャラ。
民謡をモチーフにしたBGM。
そして、タイトルとは裏腹に、ちっとも怖くないステージ背景。
どうだ、いかにもレアゲームだろ!!
しかしながら各種のバランスは抜群で、難しくもなく優しくもなく、そしてキャラクターの動きは愛らしくて、実に良質なゲームだった。
当時、ゲームセンターにおいては4っつのメーカが鎬を削っていた。
セガ、ナムコ、コナミ、そしてタイトーである。
個人的な感覚である事はこのコーナーを始めたときから言うまでもないが、それでも敢えて断言すれば、タイトーというメーカは、他の3社に比べて頭一つ飛び出ていたメーカーだった。
ナムコのキャラクター性、コナミの斬新さ、セガのユーザーフレンドリーな姿勢、そのどれもが、タイトーには備わっていたような気がする。
時代が経過して、ナムコは自社のキャラクターに引き摺られてゲームセンターから遠ざかり、「ワンダーエッグ」などの遊園地以外では「鉄拳」が良いところになってしまった。
セガは、あまりにユーザーを意識しすぎたために「セガマニア」という亡者どもを生み出し、彼らに引き摺られて破滅へのカウントダウンを始めている。
コナミに至っては、その斬新さを過剰に意識しつづけた結果、周りからは失笑を買うような馬鹿な真似をやりつづけて、批判と反感を育てた挙句、ユーザー達まで失おうとしている。
タイトーは、そう言った体質とは無縁な、健全な企業だった。
当時から、先が良く見える人間は、そんなイメージでこの4社を捕らえていた。
尤も、その後に来るカプコンの大攻勢は、俺には読めなかったのだが・・・。
レアゲームというものは、どこの会社であれ必ず一つは出しているものだが、タイトーはそれでさえもハイレベルなものだった。
奇々怪々はその中でも一際高水準なものだった。
この一時だけでも、タイトーというメーカーの恐ろしさが伺える。
だがそのタイトーも今では・・・。
かつて、ゲームセンターに集う不良どもを沸かせたメーカー達の艱難辛苦の物語は、レアゲームを知ることで理解できるだろう。
各社が必死になってユーザーを捕まえるべく奔走した闘争の記録こそ、レアゲームという形で歴史に残されているのである。
というわけで、奇々怪々を依代にして、タイトーと、懐かしい時代への懐古趣味で語ってみた。
結局、俺が言いたいことはたった一つである。
「くたばれ、売れ線ゲーム!!俺の青春を返せ!!!」
思いっきり後ろ向きな姿勢だけど、別に構わない。
だって、本音だから。