東海温泉漫遊記・其の3


という訳で(どういう訳だかは知らんが)CMCにいる俺達。

時刻は4時半過ぎ、休日のCMCとしても、既に一番混む時間帯を過ぎて、俺達は長旅の疲れを癒していた。
走行距離、実に1200キロ。
東京を出てから、熱海⇒沼津⇒富士⇒沼津⇒名古屋⇒多治見⇒浜名湖、そして再び東京へ。
疲れるのもそうだが、無駄に行ったり来たりしているのが良く分かる。

ま、おもしろけりゃ良いんだけど。

さて、CMCに来ることが決定したのは、昨晩の事だった。
勿論刹那的にである。

Z:「やっぱり最後はCMCで締めでしょ!」
俺:「実は俺もそう考えていた」

えーと、この旅行記を読んだ人なら何となく分かると思うが、だいたい発案者はZである。
俺はそれに同意している訳だが、これにはれっきとした理由がある。

だって、この旅行で使ってる車は、俺のじゃないからだ。

流石に俺だって、遠慮とかそのくらいの事は知っている。
従って、ほぼ必然的に、発案はZに任されている訳である。

とは言っても、俺もZも考えている事が殆ど同じなので、全然違和感はないのだが。

 

で。
三日目の朝、サービスエリアで目覚めた俺達は取り敢えず朝飯を買って食う。
目についたのは「海軍パン」というカレーパン。
何が「海軍」なんだか分からないが、取り敢えず買って食らってみた。

フツーのカレーパンだった。

さて、ずっと通して読んでくれた人は覚えているだろう。
そう、初日に俺達は凄まじい量の買い物をした。
無論その8割が食い物だった訳で、補給物資は三日分を軽く超えていた筈であった。

では、何故俺達はここに至って買い物なんかしているのだろうか。

 

回答1:車の中がぐちゃぐちゃになって、食い物がどこに行ったか分からなくなった。

回答2:既に食い物がダメになっていた。

回答3:豪遊気分を味わいたかった。

 

正解は、全部

初日の夜に、デザートのつもりで買ったティラミスは、何やらゲル状を通り越して液化現象を起こしている。
さながら「バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン」の如し。
大量に買いこんだはずのイカは猫のエサとして海岸に消え、他にもあった筈のパンとかお菓子みたいな物は、大量の荷物に紛れて、どこかへ消えてしまっていた。

そんな訳で、余裕のある財布にモノを言わせて無駄遣い。

さて、静岡県を走っている間、俺はずっと寝ていた。
隣ではZが一人で孤独な戦いを繰り広げている。

目が覚めた時、既に時刻は昼近く。
3日連続の晴天である。
窓の外には、富士山が大威張りで聳え立っていた。

で、東京に帰るコースを相談する俺達。
東名高速は、だいたい川崎あたりから物凄い渋滞になるので、出来ればそれは回避したかった。
巻き込まれたら、何時間かかるか知れたもんじゃない。
そこで、厚木インターで降りて、地上から帰ることを提案する。
厚木なら俺は詳しいし、裏道に近いコースも良く知っている。
今回の狙いは『中原街道』である。
この道を通ると、なんと俺の家の真正面にぴたりと到着できるのである。
で、いったん俺の家で旅の汚れを洗い流し、小奇麗な格好をしてメイドさんに会いに行く、と。

普段洒落っ気なんか欠片も無いくせに、こういう時だけは気合が入る俺達。

だってしょうがないじゃん。

で、中原街道を使用して、厚木から約1時間と20分。
無事に俺の家に到着である。

つーか、普通ならここで寝るよな。

とか思いつつも、風呂入って、垢を落として、早速再出撃である。
「何やってんだろう」とは少しも思いもしなかった、その時は。

そして秋葉原に到着、一番CMCから近い駐車場に車を停め…………って。

俺:「何イイイイイィィィィ―――――――ッ!!??」
Z:「バカなっ!! 歩行者天国だとォォォォォオオオオ―――――ッ!?」

そう、休日の秋葉原は、歩行者天国だったのである。
休日に秋葉原に来たことが無い俺達は、すっかりそれを失念していた。

仕方が無いので、泣く泣く駅の反対側の駐車場へ車を停める。
この時初めて、「俺達って頭悪いかも」と俺はちらりと思った。

で、4時半から閉店まで、例によってきっちりと居座ってた俺達。
店に入れば、既に長旅の疲れなんかどこにも無かった。
やっぱりここは地上最強の癒しの店だ。

そして、最後は新宿で別れ、俺は電車で、Zは車で家路についたのであった。

ベッドに入ったとき、「俺達って、この旅行で何やってたんだろうか」という疑問が浮かんだが、考えると虚しくなりそうなので、それ以降考えていない。
勿論今に至るまで。

因みに、4月には京都まで同じような旅行をする予定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイ、気がついた人は気がつきましたね。
この旅行記のどこにも「温泉に入った」という記述がないことに。

そうです、俺は一回も温泉に入りませんでした。
従って「温泉漫遊記」というタイトル、ありゃ嘘でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何やってたんだろう、俺達。

 

おしまい。


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