ザ・名演 Part12
さて、今回は衝撃的なプログレメタル作品となった、ドリームシアターの2作目「Images
And Words」を取り上げたい。
脅威的なテクニックが詰め込まれたこのアルバム、放置しておくことはあるまい。
早速曲紹介。
1:Pull
Me Under
2:Another Day
3:Take The Time
4:Surrounded
5:Metropolis Part1
6:Under A Glass Moon
7:Wait For Sleep
8:Learning To Live
久し振りの8曲構成だ。
1:Pull Me Under
いきなりへヴィなオープニングナンバーだ。
メタリカの影響を受けた、と公言するだけあって、重くて早いナンバーだが、その超絶テクニックには卒倒しそうになる。
しかし、この異常なテクニックに引き摺られる事なく、逆にそれを特徴としてバンドの「顔」にしてのけるところが彼らの凄味であろう。
8分にも渡る長さを持ちながら、退屈する事なく聴かせられるアレンジ力も秀逸だ。
2:Another Day
非常に美しいバラードだ。
ピアノの音色を前面に押し出しつつ、美しいヴォーカルラインで曲を引張っていく。
効果的に折り込まれるホーンの音色もいい。
しかし、ここで注目したいのはジョン・ぺトルーシのソロギター。
超絶テクニックを披露しつつも、決してメロディを疎かにする事なく曲の一部として溶け込ませる姿勢は是非とも見習うべきであろう。
3:Take The Time
これぞプログレメタル、という名曲。
変拍子や転調がふんだん盛り込まれ、プログレ的なアプローチが目立つ一方では、ツーバスや重たいギターの刻みなども勿論しっかりとアレンジとして組み込まれているところは注目だ。
また、ヴォーカルのジェイムス・ラブリエのパワー溢れる歌唱も非常に素晴らしいアクセントになっている。
特に注目したいのは4分40秒から始まるインストパートの超絶なアンサンブル。
この特異なフレーズをバッキングの一部として成り立たせており、楽曲の完成度を優先している事が分かる姿勢に脱帽だ。
4:Surrounded
メロディ主体に組みたてられたプログレハードナンバー。
美しいメロディラインと小技の効いたテクニックが同居する、キャッチ―なナンバーだ。
変拍子という、とかく受け付けにくい要素を盛り込みながらも、しっかり「聞かせる」曲に仕上げているところが流石である。
特に2分5秒からのベース、キーボード、ギターのアンサンブルはバッキングとしては王道。
ベースが同一コードを刻む中、ギター、キーボードがコードを変えていく事でアクセントを演出している。
アレンジとしては珍しくはないが、流石の理論で組みたてられたアレンジにより、曲の美しさを前面に押し出す事に成功している。
5:Metropolis Part1
彼らの有するあらゆるテクニックが詰め込まれた超絶ナンバー。
ヴォーカルはアクセント程度の役割で、インストパートが主役といってもいいだろう。
へヴィに纏められたアレンジが光る。
全体的には転調は目立たないもの派手な変拍子が前面に押し出されているため、パッと聞くと非常に受け付けにくい曲である。
注目したいのはやはり5分35秒からジョン・ミュングのベースソロで幕を開ける壮絶なインストバトルだ。
ここから始まるバトルではへヴィさをメインにしながら、過去クリムゾンやイエス、ラッシュなどが試みてきた実験的アンサンブルによく似たフレーズが顔を覗かせる。
彼らのプログレへのオマージュが垣間見えて面白い。
6:Under A Glass Moon
へヴィ重視で作られたと思われる、比較的ストレートなメタルナンバーといえるだろう。
勿論各所にプログレ的な手法はちりばめられているものの、全体として分かりやすく纏められたアレンジが目立つ。
特にヴォーカルのラブリエの織り成すメロディーは非常によく纏められていて、曲の芯になっている。
当時の彼らとしては一番目指す方向性に合致していた曲だろうと思われる。
7:Wait For Sleep
ピアノとキーボード、そしてヴォーカルだけで引張る小作品。
美しく、物悲しい旋律が印象的だ。
この旋律はこのアルバムの隠れた主題となっており、この曲から続けて始まるLearning To Liveの中で繰り返し顔を覗かせる事になる。
8:Learning To Live
前の曲から続いて入る形で構成された、超絶プログレナンバー。
文句なく彼らの最高傑作である。
11分もの長さを持ちながら、構成の美しさ、あらゆるパートの完成度の高さなど、どこを切っても最高だ。
各パートのバランスも非常にいい。
特に8分12秒から先の展開は圧巻。
これを聴いて涙を流さないヤツは人じゃない。
■ドリームシアターは、特徴として勿論とんでもないテクニックを持っているのだが、それ以上に注目したいのが楽曲のメロディセンスだ。
どの曲であっても旋律としてのポイントをしっかり押さえた作りがポイントになっている。
これは彼らの根本的な姿勢が「楽曲の完成度を高める」という方向性に向いているからに他ならない。
各々がとてつもないテクニックを有しながら、それをあくまでも「楽曲の完成度」という一点に注ぎ込んで披露しているのである。
類稀なるテクニック集団でありつつも、それに並行する形で全体を見渡す視点を持っている事。
これが彼らの「名演」の秘密である。