ザ・名演 Part2


さてさて、今回のお題はアイアン・メイデンのファーストアルバム「Iron Maiden」であります。
名盤の呼び声も高いこのアルバム、チンケな音と、素人丸出しの演奏が実に素敵だが、曲の方は最早チャチャの入れようがないほどにカッコイイ物ばかりだ。
早速曲名を表示しよう。

1:Prowler
2:Remember Tomorrow
3:Running Free
4:Phantom Of The Opera
5:Transylvania
6:Strange World
7:Charlotte The Harlot
8:Iron Maiden

以上の8曲について、では順番に語ろうか。

1:Prowler

この曲は「勢いさえよけりゃ、後はどうでもいいや」ってな曲。
しかしながら、その構成はそれなりに練られたアレンジとなっており、トップとしてのインパクトは充分。
特に、ポール・ディアノのヴォーカルは極めて素晴らしく、歌唱力を完全に無視しながらも曲のコンセプトを引き出している点は注目に値する。
ギターは下手糞。
だが、中間部での全ての楽器のハモリではそれなりに粒が揃っており、このアルバムに賭ける意気込みが伺える。

2:Remember Tomorrow

恐らく「ウケ」を狙ったと思われる、ややバラード調の一曲だ。
ポール・ディアノのヴォーカルも前の曲とは打って変って、歌唱力を重視したメロディ指向のものになっている。
この曲では、ベースラインが注目だ。
うるさくなりがちなベースラインをきちんと抑え、オーケストレーションに拘ったアレンジを施したスティーヴ・ハリスのプレイは、この楽曲にインパクトを与える事に成功している。
しかし、基本的には退屈な曲ではある。

3:Running Free

「アニメタル」でもパロられていたメインのリフ、これがこの曲の全てと言って良い。
ギター二本の特徴を生かしたハーモニーと言い、畳みかけるように襲いかかってくる決めのフレーズと言い、非常に素晴らしい楽曲である。
重厚なコードリフをメインに、展開の絶妙さやシャウト、ノリの良いシャッフルビートが相俟って、この曲のビートを生み出している。
しかし、異常なほどにドラムがリズムを取れていないのが残念だ。
はっきり言って、壊滅的に下手糞。
これさえなければもっと良い曲になっただろうに・・・。

4:Phantom Of The Opera

このアルバムのハイライトは、間違いなくこの曲である。
劇的な展開、強引なリズム展開、ハモリを生かしたギターワーク。そして、メロディックなベースラインとのちのメイデンの特徴となるものを全て注ぎ込んでいる名曲だ。
この曲では、特に注目したいのが中間部の泣きのギターと、その後に来るハモリのギター。
ラインの美しさを生かしたコードワークが絶妙。
このあたりの曲展開は作曲者としての姿勢を前面に打ち出した格好となっており、我々にとっても大きな参考となるだろう。

5:Transylvania

シャッフルビートのインストゥルメンタルナンバー。
タイトルの「トランシルバニア」は、吸血鬼で有名なポーランドだかどこかの地名だ。いや、ルーマニアだったか。
この曲では、インストには珍しくリフを前面に打ち出したものとなっている。
通常ならばメロディックなソロを前面に置く所を、この曲では敢えて曲全体の構成を聴かせることを目的としている。
それだけあって、非常に優秀な造りの楽曲だ。
注目はメロディをコードにあわせた中間部のギターソロワーク。
あまり目立つものではないが、それだけ曲に溶け込んでおり、侮れない覚えやすさがある。

6:Strange World

前の曲から続く形で始まるこの曲は、はっきり言ってこのアルバムでは最低の駄曲。
という訳で次へ。

7:Charlotte The Harlot

アイアン・メイデンの表の顔をエディだとするなら、裏の顔は娼婦シャーロットであろう。
この曲も基本的には勢いのみで突っ走る曲だが、ここでは注目したいのがコードワークでパワーを醸し出すギター。
大して歪んでもおらず、むしろチープな音であるにもかかわらず、その疾走感は爽快でさえある。
これはビートを生み出しているリズム隊との息がしっかりと合っているからであることは疑いがない。
また、歌唱力よりもパワーを重視したポールのヴォーカルも、この曲の雰囲気を演出するのに一役買っていることを忘れてはならないだろう。
後のディッキンソンも悪くないが、やはりメイデンにはこの手の頭の悪いヴォーカルが似合っていると思うのである。

8:Iron Maiden

訳のわからないはモリから始まるこの曲は、このアルバムでは唯一キーがEマイナーではない曲。
力尽くな展開と、勢いのみで構成された曲ではあるが、ポールのヴォーカルが実にマッチしている。
特に注目したいのがベースソロ開けから始まる3番の歌メロ。
この曲では同じ歌詞を3回も繰り返すという暴挙が行なわれているが、ポールは3回とも微妙に歌い方を変えることで、アクセントを与えることに成功している。
全体的に見てカッコイイとは言いかねる曲ではあるが、メイデンらしい特徴を備えた名曲であることは疑いがない。
リズムの強引な転換、異常なハモリ、そういう要素がバランス良く配されており、短いながらもメイデン節という特徴を前面に打ち出したアレンジが非常に秀逸だ。

 

■メイデンというバンドは、基本的には作曲能力が高いとはいえないバンドだ。
コードワークもそれほど芸がないし、ハモリも「お約束」といえる範疇である。
それでも彼らが絶大なる支持(勿論俺も支持者だ)を得ているのは、偏に「独自の曲風」というものを前面に打ち出しているからだ。
世界観をしっかりと持った作風が、メタル全体の支持というよりも、メイデンに対しての支持を齎すのである。
己自身のあり方をしっかりと持っているものはやはり強い。
彼らの「名演」は、この姿勢の産物なのである。


前に行くぞ