ザ・名演 Part7


今回はアニメ「ヘルシング」の主題歌を提供している(らしい)Mr.Bigのデビュー作、Mr.Bigを取り上げてみる。
かなり強烈な作品なので名演に相応しいだろう。

それでは曲紹介

1:Addicted To The Rush
2:Wind Me Up
3:Merciless
4:Had Enough
5:Blame It On My Youth
6:Take A Walk
7:Big Love
8:How Can You Do What You Do
9:Anything For You
10:Rock & Roll Over
11:30 Days In The Hall
*

*はボーナストラック

中々の曲数だと言える。

1:Addicted To The Rush

オープニングからいきなりビリー・シーンのタッピングが炸裂するが、テクニックだけではなくメロディックな部分を重視した作りが特徴だ。
エリックの歌は非常に素晴らしく、ポールのギターとビリーのベースのバトルに負けないインパクトを持っている。
歌が入るまでは4度コードを上手く使ったリフなのだが、歌が入った瞬間に単音リフになるところなど、この曲でのバランスを重視している証拠になるだろう。
オープニングとしての掴みは申し分なしだが、ビリーのベースは五月蝿い。

2:Wind Me Up

ちょっとウエストコーストの香りが漂う一曲だ。
ミドルテンポとハーフミュートの特徴を存分に生かした重たい単音リフが素晴らしい。
エリックの歌唱はメロディというよりはフィーリングなのだが、この曲では非常によくマッチしている。
ややブルースがかったプレイが各所で顔を覗かせる。
しかしやっぱりビリーは五月蝿い。

3:Merciless

跳ねまくったシャッフルビートが特徴のこの曲は、パットのドラムに注目したい。
かなり基本に忠実なプレイなのだが、リズムキープとスネアの使い方が素晴らしい。
ベースとギターのリフに上手くリズムを絡ませていて、シャッフル独特の跳ねをより一層強調させている。
また、凄まじいテクを持ちながらも、リズムキープに拘るポールのギターもいい味を出している。
しかしビリー、どういいわけしても五月蝿い。

4:Had Enough

バラードナンバーであるが、最初のビリーのベースの速弾きは無意味、五月蝿い。
全体的には落ちついた感じで進んでいき、突然盛り上がるという王道の展開である。
サビの部分でのコーラスとエリックのヴォーカルの絡みは絶品である。
また、ギターソロもかなり聴き応えのある、メロディ主体のプレイで好感が持てる。

5:Blame It On My Youth

スマソ、この曲あんまり好きじゃないわ……。

6:Take A Walk

あまり重たく聞こえないポールのギターであるが、この曲のリフを聴くと、どれだけ重たいかが分かる。
フォービート主体の曲調が重さをイヤが上にも煽る訳だが、この曲ではビリーのベースが始めていいとこ見せる。
キレのいいフィンガーピッキングが冴え渡り、この曲独特の間を生み出している。
また実に正確なリズムキープを聴かせるポールのギターソロも絶品。
更にはエリックのソウルフルな歌唱が曲にポップさを与えている。

7:Big Love

ブルージーなバラードナンバーだが、この曲は何と言ってもエリックの歌唱に注目。
フィーリングに任せて、微妙にラインを崩して歌うエリックの歌唱なくしては、この曲の良さは半減してしまうであろう。
また特徴的な彼の声にかかるヴィブラートがこれ以上無いほど生きている。
とても素人に歌え切れない、凄まじい彼の歌唱力が堪能できる一曲だと言えよう。

8:How Can You Do What You Do

このアルバムのハイライト、超名曲ロックンロールナンバーである。
何と言ってもポールのギターリフの正確さと、ソロにおける凄まじいプレイに尽きる。
特にソロは、物凄い音数を使っていながらもメロディックであり、一音一音がはっきり聴き取れる上、一度聴けばその流れを覚えてしまうほどに素晴らしい。
起承転結のしっかりした、彼の真骨頂が堪能できるプレイである。

9:Anything For You

これまた名曲、非常に美しいバラードナンバーである。
特にエリックは抑揚自在に楽曲を盛り上げ、素晴らしい歌唱力を余す所無く発揮している。
しかしあまりにも惜しいのがビリーのベースの音。
ずっと書いてきた通り、彼のベースの音ははっきり言って五月蝿い。
この曲ではプレイ自体は凄く良いのに、音があまりにも酷いもので「嗚呼、ベースがコイツじゃなきゃなぁ」と思うことしきりである。

10:Rock & Roll Over

またまたカッコイイロックンロールナンバーである。
全体的に纏りが良く、各楽器のプレイが非常に良い味を出している。
パットのキレの良いドラミングは言わずもがな、また五月蝿いビリーのベースも、この曲調には比較的マッチしている。
ポールもかなり自由に曲の中で遊んでおり、ミドルテンポでありながらもかなりの疾走感を感じることが出来る。
サビの部分のカッコ良さはかなり来るモノがある。

11:30 Days In The Hall

元曲は忘れてしまったが、カヴァー曲である。
ブルースロックかウェストコーストか、という曲調でエリックのヴォーカルが良くマッチしているが、やっぱりビリーのベースが五月蝿い。
ポールのギターは、ひょっとするとフロントピックアップのみのプレイかもしれない。
おまけの曲だが、彼らの魅力でアレンジされたこの曲、中々どうして、良い曲である。

 

■さて、彼らの曲が本当の意味でピュアなハードロックだったのは、続作までである。
こののち、彼らは持ち味をすっかり変えてしまい、非常に纏りを欠いた曲ばかりを発表する事になる。
本作と続作と、この二枚こそが彼らの最高に纏っていた時代のアルバムであり、また同時に彼らの魅力がぎっしりと詰まっている。
テクニックとフィーリング、双方が完璧に近いバランスで配されており、まさに名演の名に相応しい。
古き良き時代の名演、それを知りたいならこれに限る。


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