ザ・名演 Part3


今回の主題はRAINBOWの超名盤・「RAINBOW On Stage」である。
これはライブアルバムなので、本当の意味での「名演」と言えるだろう。
また、プロデューサーにマーティン・バーチがついているところも、密かに押さえておきたいポイントだ。

早速、以下に曲を並べよう

1:Intro:Over The Rainbow/Kill The King
2:Man On The Silver Mountain
3:Blues
4:Starstruck
5:Catch The Rainbow
6:Mistreated
7:Sixteen Century Greensleevs
8:Still I'm Sad

またもや8曲構成だね(笑)。

1:Intro:Over The Rainbow/Kill The King

この頃のレインボウの最大の特徴と言えば、ライブのスタートは全て「オーバー・ザ・レインボウ」であったことだろう。
この曲でスタートするライブ構成は彼らの所謂「様式美」の拘りとなっていた訳である。
この「偉大なるお約束」を作り上げ、弾けるような期待感をもたらしたのは、ほかでもない、リッチーのカリスマ的な存在感であった。
このアルバムではその魅力が余す所無く再現されており、劇的なライブのスタートが情景を伴って訴えてくる。
スタジオではこじんまりと纏ったイメージを持たせる「Kill The King」だが、ここでは壮絶な演奏だ。
大迫力のコージーのドラム、凄まじい荒々しさで鬼気迫る熱演のリッチー、そして、あらゆるヴォーカリストを震撼させるロニーの歌唱。
アルバムに収録されているとはいえ、楽曲の持つエネルギーは聴く者を翻弄する。
完成度の高い楽曲を荒々しく再現し、観客を興奮の渦に飲みこむ。
レインボウの持つ魅力を最大限に引き出したこのオープニングは必聴だ。

2:Man On The Silver Mountain 〜
3:Blues 〜
4:Starstruck

この3曲は一連の流れになっており、一つの楽曲と捉えても差し支えは無かろうと思う。
これまたスタジオバージョンを遥かに凌ぐ迫力を持っている。
ここで注目したいのが、「Blues」におけるリッチーのギターフレーズ。
ライブにおいては荒々しさを旨とするリッチーが、ここでは極めて繊細なフレーズを奏でており、楽曲の中間部におけるインパクトを与えることに成功している。
この演出もまた後々までの「お約束」となっており、様式美への拘りを感じさせるアレンジとして特筆すべきだ。
また、ロニーの壮絶な血も凍るようなアカペラも配されており、このアルバムを通して垣間見ることが出来る「楽曲を聴かせることへの拘り」が極限まで冴え渡っている。

5:Catch The Rainbow

アルバムはやや小休止、と言った楽曲を迎えることになる。
この曲は、リッチーの長い音楽生活の中でも比較的珍しい、「長くてメロディを聴かせるためだけの曲」と言ってもいい。
基本的に冗長と言っても良い曲なのだが、注目はコージーのドラミングとロニーの歌唱。
コージーはここで非常に繊細なドラムを聞かせており、パワーだけでなく叙情的な演出をメインにしたドラムをも楽しませてくれるプレイヤーだという事を証明してくれる。
また、ロニーは美しく纏ったメロディを切々と歌い上げ、その力量を嫌と言うほど思い知らせてくれるのだ。

6:Mistreated

このアルバムで「Kill The King」と並ぶもう一つのハイライト、それがこの曲である。
元はと言えば、リッチーが在籍していた当時のDEEP PURPLE第3期の名曲であった。
元曲ではデイヴィッド・カヴァーデイルが歌っていたが、ロニーの力量はカヴァーデイルを上回っているために、凄まじくカッコイイ物となっている。
全体的に見てブルースフィーリング溢れる曲なのだが、リッチーのハードなギターと、コージーの重いドラムが作用することにより、非常に聴き応えのあるバックの演奏が楽しめる。
また、ライブに際してのアレンジも忘れずに施されており、細かな業を各所にちりばめてあるところも注目。
かつてリッチーはこの曲を「ギターの為の曲」と言い切り、カヴァーデイルは「ヴォーカルの為の曲」と対抗した。
パープルのスタジオ版を聴く限りではどちらの言い分にも一理あると思ったが、このアルバムを聴いて確信したのは、この曲は「ヴォーカルの為の曲」であるということだ。
つまり、それだけロニーの力量は高水準であると言える訳である。

7:Sixteen Century Greensleevs

リッチーらしい、ちょっと凝ったアレンジを施した変拍子が楽しめる曲だ。
オープニングの時点ではバラードに聞こえるが、いざ始まってみると非常に重厚で聴き応えがある。
この曲では誰が飛び抜けている、という事は無く、全体的に非常に良くバランスされた演奏が為されているのが、返って注目に値するところだ。
メインのリフ演奏をかっちりと弾き切るリッチーの姿勢は好感が持てる。
ポップさを前面に押し出したレインボウでは珍しく、かなりメタル寄りの曲といえるだろう。

8:Still I'm Sad

これも軽快なロックアレンジが施された曲。
レインボウらしい曲で、元はインストだった。
この当時のライブでは、ライブのみでヴォーカル入りを披露するという演出がファンの興味を惹いていた。
元は(誰だったかは正確に思い出せないが)カヴァー曲だったので、恐らくこういった手の込んだ演出になったのであろうと推測される。
余談ではあるが、最近になって発売された「Stranger In Us All」において、始めてスタジオバージョンでの歌入りが発表されたのは記憶に新しい。
ここではやはりロニーの歌唱力の高さが注目。
難解なヴォーカルラインを軽々と歌い切る凄まじさは、やはり最強のヴォーカリストであると言っても過言ではなかろうと思う。

 

■レインボウの最大の特徴は、パープルの時よりもより顕著にライヴが素晴らしいという点にある。
スタジオではやや冗長とも言える曲を、ライヴにおいては魅力溢れるアレンジで聴かせる彼らは、本当の意味でのライヴバンドだったといえよう。
彼らの拘りはライヴへの拘り、いかに盛り上げるかというところにあった。
楽しめるライヴを、楽しめる演出で聴かせる。
彼らの「名演」は、この姿勢から常に生み出され続けていったのである。


戻っちまいます