俺を変えた一曲 Part 1


さて、今回取り上げたいのは「Whitesnake」の<Crying In The Rain>である。
収録アルバムは「Whitesnake」、日本では「サーペンス・アルバス〜白蛇の紋章〜」で知られる、歴史的なセールスを記録した超・名盤である。
参考までに数字を挙げておくとセールス的には全米だけで800万枚、アルバム中の<Here I Go Again>はビルボード1位に輝いている。
俺の私的見解に頼らずとも、歴史に残る名作であることは疑いが無い。

この曲は元々「Saints And Siners」というアルバムに収められていたものを、アメリカ進出に会わせてリメイクしたものである。
元々はブルーステイスト溢れる曲だったが、このアルバムでは見事なヘヴィメタルに生まれ変わっている。

イントロからして強烈。
何の前触れも無くへヴィなギターサウンドが炸裂し、続いてデイヴィッド・カヴァーデイルの重低音パワーボイスが心を揺さぶる。
展開も劇的で、更に空間処理を施した音作りも相俟って全体的に幻想的で荘厳な作りとなっている。

で、この曲の最大のハイライトはそのギターソロ。
トリルを多用したフレーズから、一気に畳みかける激烈な速弾きまで、まるで曲の主題「雨の中で泣く」という行為をビジュアル的に見せ付けるかのような素晴らしさである。
曲のパワーを生かしつつ、ギターソロで曲全体を盛り上げていく手法は、まさにジョン・サイクスの面目躍如。
更に、前半は入っていなかったキーボードを後半は積極的に導入していくことで曲の盛り上げどころを抑えきったアレンジも実に秀逸だ。
カヴァーデイルのパワーボイスも負けじと唸りを上げ、後半のテンションは、あらゆる楽曲の中でも類を見ないものとなっている。

で、この楽曲が俺に与えた具体的な影響とはどんなものかと言うと。
「ギターは曲を盛り上げる為にはあらゆる手段を尽くすが、同時に曲を壊すようなことをしてはならない」ということだ。
これだけのパワーがありながら、ジョン・サイクスのギターは曲を破綻させることなく、むしろ曲に新たな生命を与えている。
先にも述べたが、そのギターソロが実に雄弁に物語ってくれる。
無駄な作業は一切行わず、一つ一つの音が意味を持っている。
ギタリストとして目指すべき境地が、この曲なのである。

パワー、展開、美しさ、荘厳さ、メタルの持つ全ての要素を満遍なく注ぎ込んだこの曲こそ、ギタリストのサンクチュアリだと俺は思っている次第なのであった。


帰るってば