特別編・東海温泉漫遊記 其の一


さて、過去に遡ること数日前の11月の18日の出来事だった。
友人Z(以後Zと記述)より、突然の電話が入った。
「突然だけど、今度の連休に温泉旅行に行かない?」
温泉大好きな俺としては、これは二つ返事で了承するのが当然であった。
「ああ、良いよ」
「じゃ、待ち合わせは22日のAM10時ごろってことで」
「了解」

で、当の22日に何をしていたかと言うと。

「ふう、明日から温泉旅行だぜ。今日もバイト頑張るか」

アホです、俺。
当然家に帰ってみて、大量の留守電(すべてZから)が入っているのを確認して真っ青になりました。
その後、様々な連絡手段を使って漸くZとのコンタクトをとる事に成功し、俺は翌日、新幹線にて直接熱海へ赴く事になった。

思えばこの時から、この波乱万丈の旅は始まっていたのであった。

 

*初日:11月23日

午前9時20分、熱海での待ち合わせ時間の午前10時半に間に合わせるべく、俺は順調に東京駅へ到着した。
昨日の今日だったので、取り敢えず自由席の切符を購入すべく窓口に並び、絶句。
「なんだこのコミケのような人の数は」
発想がちょっとアレですが、動かないんですよ、人が多すぎて。
待たされること20分あまり。
切符は購入できましたが、今度は新幹線のホームに入れません、人が多すぎて。
結局10時頃Zから電話が来て、
「ごめん、人が多すぎて時間間に合わないわ」
と言う事で、1時間繰り延べして11時半に熱海駅、と修正になった。

さて、23日は快晴。
空気もかなり綺麗で、新幹線の窓から見える風景は絶品です。
東海道新幹線は普段全く使わないので、何かと珍しい物を発見できました。
特に、小田原から見える富士山は中々の見物だと思います。

さて、11時25分ころに熱海に到着。
無事に駅前のロータリーにてZと落ち合う事が出来た。
Z:「お疲れ様」
俺:「いやー、人が多くて疲れたよ、ここまで来れば安心だね。マルボロ吸う?
お詫びも兼ねてジョジョネタをかます俺。
Z:「いらない」
俺:「……」
俺の渾身のジョジョネタはあっさりと流された。
(つーかジョジョネタでお詫びになるのか?)

さて、Zの車に乗り込み、いよいよ旅行開始。

Z:「ガム噛むかい?」

あ、有難う!!
ジョジョネタにはジョジョネタで返すというお約束を守ってくれたんだね!!

Z:「さて、何処に行こうか?」
俺:「ん〜、何処でも良いよ」

これがこの旅行の性質を如実に現しているセリフである。
そう、俺達は「温泉に行く」という目的以外、細かい計画は一切立てていなかったのである。
「取り敢えず、伊豆半島でも回ってみようか」
その場で決まったのは、僅かにこれだけ。
口にこそ出さなかったものの、2人とも心中は同じであった。

「ま、走ってりゃ何とかなるさ」

さて、走っている最中の感想ですが、とにかく空が広い!
東京だったらビルが見えるところに空があります。
更に、地平線が丸いってのを確認できるのが素晴らしいです。
神よ、地球は丸かった。

走っている最中、非常に「吉野家」が多く存在する事に気がついていた俺達。
「凄いな、また吉野家がある」
かなり田舎のほうまで進出している吉野家の生命力に感服です。

俺:「そういや、ここ暫く吉野家行ってねーな」
Z:「注文はやっぱり大盛りねぎだく(*注1)ですか」

ねぎだく。
まさかこの言葉がここで出てくるとは思わなかった。

さて、昼飯は天城連峰の峠の蕎麦屋「さくら」にて。

俺:「さくらたんのエロ画像キボンヌ」(*注2)

店の名前に釣られてつい口走ってしまいました。

蕎麦屋「さくら」の中はかなりいいカンジ。
昼飯時という事もあって、結構人が多かったのがちょいと残念でした。
ここでは自然薯を使った「とろろ蕎麦」がウリです。
かなり美味いです。

Z:「せっかくだから、従業員さんには着物で応接してもらいたかったなあ」
俺:「若しくはメイド服ね」
Z:「実は俺もそう思ってた」

こんな所まで来て、結局何も変わってない俺達。
普段の会話と何も変わりません。

さて、下田を過ぎたあたりから今夜の宿の事を心配しなければならなくなりました。
一応、事前の打ち合わせでは「適当に現地で探す」ということになってはいた。
この時点で既に何か方向性を間違えているような気もするが。

Z:「取り敢えず、もうちょっと走ってみてからでしょ」
俺:「そうだね」

あくまでも問題は先送り。
結局、いつでもこんなモンだったりする俺達。

やがて日が西に傾き始めたころ。

Z:「水平線に沈む夕日が見てーな」
俺:「んじゃ、取り敢えず海沿いかね」

目的の無い旅らしい、非常に即物的な考え方で動く俺達。
計画という文字は俺達の頭の中には無かった。

夕日に空が染まるころ、流れているBGMはKeyのBGM集(*注3)になる。
風景の美しさと相俟って、矢鱈とセンチメンタルな気分になる俺達。
KanonやらAir(*注4)やらの曲がこれほどに合う風景というのも、たぶんそうはないだろう。

だが。

Z:「あれ?この道を行けば海か?」
俺:「違うだろ、この道じゃねーの?」
Z:「なんだよ、これさっきの道じゃんか」
俺:「おいおい、そこ一方通行だってば」

雰囲気ぶち壊し。

結局、それから迷いまくった末に、海沿いの海岸から水平線に没する夕日を見ました。
残念ながら水平線上に雲が出ていたため、海に沈む所までは見れませんでしたが、中々に壮大な眺めであったことは間違いない。

俺:「で、今夜どうしよう」
Z:「もうちょっと走ってみるベ」

どんな状況でも無計画を貫く俺達。

さて、途中コンビニに入って地図を調達する俺達。
今後の大まかな計画と、地元の温泉の情報を入手していたのだが……。

Z:「なんか俺、夜の海を見ながらコンビニ弁当食いたい気分なんだが」
俺:「それ良いな」
Z:「じゃ、今夜は野宿だな」

誰も止めないのか……。

で、土肥(とい)の街中にて、適当に海沿いの車を止められるスペースを探す。
程なくしてちょうどいいスペースを発見。
至近距離に公衆便所もあり、野宿をするにはもってこいである。

で、次はコンビニにて弁当を調達。
更に、大量のつまみとお菓子と酒を入手。
無論一度飲んだら運転はしないつもりだ。
更に、便所に行くのに便利だからという事で、ティッシュ・トイレットペーパー・そして懐中電灯を購入。
ちーん。←レジの音

「1万円になります」

コンビニの買い物で1万円超えたのを見るのは、これが始めてでした。
物凄い長さのレシートが返ってきたけど、邪魔なので捨てちゃった。

で、海沿いに車を止めてまずは腹ごしらえ。
外に出たんだけど……寒い。
猛烈に寒い。

Z:「焚き火したくない?」
俺:「じゃ、燃料になる流木を集めないと」

俺達に「常識」の2文字はないのか。
つーか誰か止めろよ。

紙を燃やし、木に火をつける俺達。
しかし、風が強いのと火力が全然足りないので、全く火がつかない。

俺:「ダメだ、俺達サバイバルには向いてないよ」

しかし、ここでZの頭が素晴らしい頓智を閃かせた。
この旅が長くなると踏んだZは、予めジッポオイルを持ってきていたのである。
これを木に振りかけ、そこに火をつけると……おお!!
見事なキャンプファイヤーの出来あがりである。

俺:「ジッポとオイルがあれば何処でも生き抜けるってことだな」

さっきと言ってること違うじゃん。

あとは暖を取りつつ、海を見ながらの食事。
着火するのに予想以上に手間を取った所為か、弁当はすっかり冷めていた

食事の後、燃えていた火をきちんと消火して、車の中で酒盛りの始まりである。
まったりとした酒盛りは、晴天の星空の下大いに盛り上がる。
とにかく、東京と違って星の数が多い。
1等星と2等星しか見えない東京とは、何から何まで圧倒的に違いました。
北斗七星やオリオン座が偉く綺麗。

Z:「死兆星(:注5)まで良く見えるぜ」

いや……その感想はちょっとズレてるような。

ところで、このスペースの真横には、凄く高そうなホテルがたっていました。
それこそ庶民が泊まれないような豪奢なヤツです。

Z:「ケッ、どうせどこかのブルジョワが泊まってるんだろ」
俺:「やだやだ、善良な一小市民としては相手したくないね」
Z:「わたくしキャビアしか食べた事ございませんわ、ってなヤツらばっかりなんだろーな。」
俺:「そんなヤツには俺のキャビアを食わせてやるぜ」

勢いだけで言ってしまったセリフですが、俺のキャビアって、なに?
タマゴなのか?

さて、酒盛りの最中に気がついたのですが、車の横に一匹の白黒のブチ猫が蹲って、ものほしそうに俺達を見ている。
ちょっとつまみのイカを与えると、それを頬張って、どこかへ逃げていってしまう。
イマイチ可愛くない。

Z:「残念だな、黒い子猫だったら迷わず『レン』(*注6)と名づけたものを」
俺:「若しくは白猫だったら『アルクェイド』(*注7)だな」

このへん、何処に行っても何をやっててもかわらんオタクな俺達であった。

で、結局空が白み始めるまで、全然眠くならない俺達。
その間、エロゲーメーカーで何処が優秀かという事を真剣に議論している姿は、ある意味非常に神々しいものだったと自負している。

俺:「Keyは確かに優秀なメーカーだよ、でも設定凝り過ぎでエロを蔑ろにするのはどうかと思う」
Z:「確かに」
俺:「Evolution(*注8)のゲームを見ろ、設定なんか何もないじゃん。ただ『主人公が巫女さんフェチ』だとか『メイドフェチ』だとか『ファミレスの制服フェチ』だとか、それだけだぜ」
Z:「いわれてみればそうだ(笑)」
俺:「そんなんでもゲームは出来るっていういい見本だよ、アレの良さが分からんようじゃエロゲーマー失格だな」
Z:「女子供はすっこんでろ(*注9)ってことだな」

あまりにも絶妙のタイミングだった、爆笑。

で、エロゲーメーカーについての結論。

LEAF(*注10) ⇒ 次回作次第ではもうアウト、かなりヤバイ

Key ⇒ まァ頑張って欲しい。次回作がエロ無しだったらかなり引くぞ。

Evolution ⇒ 通好みの馬鹿メーカー。女子供はすっこんでろ。

で、酒も抜けたAM5時ごろに出発した俺達であったが、程なくして眠くなり、途中で見つけたコンビニの駐車場にて一眠り。
漸く1日目が幕を下ろしたのであった。

←To Be Continued !!

 

*注釈

*注1「大盛りねぎだく」……2ちゃんねるで有名な「吉野家のコピペ」の一節。元々の出典は、吉野家について綴られたとある日記サイトの文章。

*注2「さくらたんのエロ画像キボンヌ」……これも2ちゃんねるで有名なコピペ。「キボンヌ」とは「希望する」の意味で、2ちゃん語としては使用頻度が高い。本来は半角カタカナで書かれる。「さくらたん」とは、CCさくらのこと。

*注3「KeyのBGM集」……Keyとは、数あるエロゲーメーカーの中でも一際抜きん出た業績と支持を誇る、超有名ブランド。俗に「鍵」と呼ばれる。BGM集と言うのは、Zがゲームから音を落として作ったMDを指す。

*注4「KanonやらAir」……前述のKeyが世に送り出した、感動巨編エロゲー。いや、確かにいいゲームであるし感動する。

*注5「死兆星」……漫画「北斗の拳」に出てくる、北斗七星の脇に輝く星。これを見ると、その年の内に死が訪れると言われている。

*注6「レン」……TYPE-MOONが世に送り出した傑作同人ソフト、「月姫」の登場人物。正確には本編ではなく、本編の後に出たお祭りソフト「歌月十夜」の登場人物である。正体は黒猫で、普段は10歳くらいの少女の姿をしている。滅茶苦茶可愛い。

*注7「アルクェイド」……同じく、「月姫」の正ヒロイン。白い吸血鬼で、極めて猫属性な性格のため、良く白猫に比喩されるのである。滅茶苦茶美人である。

*注8「Evolution」……非常にアホな設定のゲームを作るエロゲーメーカー。代表作は「ドリル少女スパイラルなみ」である。このタイトルだけでこのメーカーの本質が理解できる。

*注9「女子供はすっこんでろ」……前述の「吉野家のコピペ」の一節。その道の通が素人に向かっていう言葉とされている。

*注10「LEAF」……俗に「葉っぱ」と言われる、老舗エロゲーブランド。一時は頂点を極めたが、数々の不祥事によりその座をKeyに譲った。現在、会社設立当時までに信用を失っている。頑張って欲しい。


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