ジョジョ姫

ジョジョ+月姫で送るジョジョネタ


 

『特別編』ジョジョ姫(JOJO+月姫):歌月十夜

消えた遠野志貴の巻

 

着替えを済ませて居間に行くと、例によって例の如く秋葉が紅茶を飲んでいた。
中庭を眺めていた秋葉が視線を向けてくる。

【秋葉】「おはようございます兄さん。今朝は調子がよさそうで良かったですね」

満足げなその笑みは、ようするに今朝は珍しく早いんですね、という言葉の裏返しなんだろう。

【志貴】「飲んどる場合か――ッ」

 

バシ ガシャン

 

シュトロハイムとばかりに挨拶して食堂に………。

【秋葉】「行かせるわけないでしょ」

略奪されてバッドエンド、本当に「消えた遠野志貴」って訳だ、やれやれ……

 


『特別編』ジョジョ姫(JOJO+月姫):アルクェイド・シエルルート4日目

黄色の殺人鬼 その1 の巻

 

ごっ、と黒いコートが大きくはだけた。
品のないケモノの臭い。
危機感は今までの比ではない。

コートの中から、どこか、子供のころに一度は見た覚えがあるようなケモノが飛び出してくる。
額に角のある馬だの、翼の生えた大きなトカゲだの。
それらは、たしかに厄介だった。
とても簡単には殺せない。
なにしろ『死に易い部分』がとても少ない。
だから―――よけい、真剣になる。
殺す、と言葉にしたせいだろうか。
血の流れが痛い。
神経がグラインドする。
体中のあらゆる物が、あの障害を排除するために連結していく。
角の生えた馬は、その角ごと、真っ二つにした。
トカゲは、背中から右下腹部にかけて切り取った。

【ネロ】「―――在り得ん」

障害の声が聞こえる。
あいにく、こっちはもうまともに視界が働かない。
視えているのは、ただ黒い点と線だけ。
「おのれ―――なぜ私が、たかだか人間風情に渾身でかからねばならんのだ!」
びゅるん、という音。
半分しかなかったネロの体が、ヒトとしての完全な形に戻る。
―――ようやくアルクェイドを捕まえていた半身を、自分の体に戻したらしい。

【ネロ】「―――殺す。我が内なる系統樹には、貴様らの域を凌駕する生命があると知れ―――」

ネロの両腕が、自らの胸を掻きむしる。
闇を裂くように。
ヤツは、自分の胸を自らの腕で裂いた。
ネロの胸に空いた穴から。
なにか、奇怪なモノが這い出てくる―――。
一言で表現するなら、蟹のような蜘蛛。
大きさ的には、アルクェイドが仕留めた巨象よりやや大きめ。

「―――――」

視界が赤くてよく見えない。ただ、奇怪なシルエットと『死』だけがみえる。
指先が冷たい。
血を流しすぎたのか、体中が冷えきっている。
それでも―――まだ体は悲鳴をあげていない。
そんな余力があるのなら、1秒でも早くアイツを殺せと命令してくる。
―――背骨がいたい。
体がさむい。
指先が凍てついていく。
なのに、脳髄だけが火のように熱く。
蜘蛛とも蟹とも取れないケモノは次々とネロの体から這い出てくる。
ネロまではあともう少し。
ヤツに近づくためには、この生き物たちは邪魔だった。
とりあえず三匹。
出てきた邪魔者は、ことごとく殺した。

【ネロ】「―――有り得ん」

ネロは眩暈でも起こしたように、よろりと後ずさる。

【ネロ】「―――私のあらゆる殺害方法が殺されるなど、そのような事実が在り得るはずがない……! 私たちは不死身だ。私が存命している限り死しても混沌となりて我に戻り転輪す不死のケモノたちが―――なぜ、貴様に刺されただけで、元の無に戻ってしまうのだ―――!」

叫んでいる敵に歩み寄る。
ネロは後ろに引こうとして、かろうじて、後退することを押しとめた。

【ネロ】「―――無様」

機械のようだった目に、赤い憎しみの感情が、ようやく燈った。

【志貴】「ケェ! 逃れるつもりか? まあ だが教えといてやる…耳クソをストローでスコスコ吸い取ってよおーく聞きな…」

                                    ・    ・    ・    ・    ・
【志貴】「おれの七夜の血『殺人貴』に 弱点はない! おまえは逃げないのではない! おれが逃がさないだけなのさッ!

【志貴】「このビチグソがァ、ガァハハハハハーハハハハ―――――ッ」

【ネロ】「……必要以上にムカツクな、コノヤロウ」

 

『特別編』ジョジョ姫(JOJO+月姫):アルクェイド・シエルルート4日目

黄色の殺人鬼 その2 の巻

 

ヤツのココロは理解できる。
―――おそらく。
殺人鬼としてのネロは己に撤退を命じている。
しかし吸血鬼としてのヤツは、自らがただの人間に敗退することを認めない。
理解しない。
撤退することさえ許さない。
だから、それ以上後退することを可能としない。
その精神、自身が無力だと悟るも認めぬ頑なさ。
さらに一歩。
これで、あとは跳びかかればナイフでヤツの体を裂けるところにきた。

【ネロ】「―――否、断じて否―――! 我が名はネロ、朽ちずうごめく吸血種の中において、なお不死身と称された混沌だ! それがこのような無様を見せるなぞ、断じてありえぬ……!」

―――ネロの体が、カタチをもっていく。
今まで闇でしかなかった体は、明らかに個として化肉していく。

【ネロ】「この身は不死身だ。死など、とうの昔に超越した―――!」

ネロの体が跳ねる。
ケモノたちではない。
ヤツは、残っているケモノたちを極限まで凝縮し、自らを最高のケモノと成して、こちらの息の根を止めに来た。
その速度、アルクェイドにも劣らない。
触れればその場で首を粉砕されかねない腕が伸びてくる。

【ネロ】「おらあ」

 

ブンッ

 

【志貴】「むっ、早いッ しかしィ――――――ッ」

それをかわして、すれ違いざまにヤツの腕にある『線』を断った。

【志貴】「弱点は ねーといっとるだろーが人の話きいてんのかァ この田ゴ作がァ―――――

【アルクェイド】「ああ……志貴が反転しちゃった……」


 

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