ザ・名演 Part10


さて、10回目の今回はインストゥルメンタルアルバムとして抜群の出来を誇る傑作、イングウェイの「Rising Force」を取り上げようと思う。
このアルバムは、色々と変遷を経てきたイングウェイが、始めて個人プロジェクトをメインにして活動する事になった第1作でもある。
それ故に曲に費やされたエネルギーは相当なものらしく、非常に完成度が高い。
捨て曲に相当するものはなく、全曲が素晴らしい光彩を放っている傑作だ。
何を隠そう、ハードロックというものを意識して購入したアルバムはこれが始めてだったので、俺にとっては想い出深い一枚である。

さて、早速曲紹介。

1:Black Star
2:Far Beyond The Sun
3:Now Your Ships Are Burned
4:Evil Eye
5:Icarus's Dream Suite Opus 4
6:As Above, So Below
7:Little Savage
8:Farewell

今回は久々に8曲構成だが、LP時代のアルバムだから当たり前といえば当たり前だ。
収録時間も40分を切っていて、時代を感じさせるものがある。

 

1:Black Star

「これは聴いとけ! ギターインスト10選」参照。

2:Far Beyond The Sun

この曲こそイングウェイの基本的なスタイルだと断言できると思う。
音の並び方が非常にクラシックでありながら、根本を支える方法論は非常にオーソドックスなヘヴィメタルである。
シャッフルビートの刻みをバッキングに、イングウェイのギターが奔放に暴れまわる痛快な一曲だ。
強烈な速弾きが炸裂し、その速さとクラシカルなフレーズに圧倒されがちだが、注目すべき点はむしろ速弾き以外で紡いでいくメロディの美しさであろう。
特に0:47あたりからの刻みによるソロフレーズは注目に値する。
ここでは実にオーソドックスなプレイが成されており、イングウェイ=クラシックという構図が短絡過ぎである事が良く分かるものとなっている。
彼の凄さは、同じ曲の中でも状況によってディミニッシュと通常のマイナースケールを的確に使い分ける所にある。
また、音の組み立てが非常に美しく、彼のメロディセンスを良く現していると言えるだろう。
途中から展開するキーボードとの絡みは絶品である。

3:Now Your Ships Are Burned

ジェフ・スコット・ソートによるヴォーカル曲。
このアルバムにおいてはそれほど大した曲ではないが、ジェフのヴォーカルはパワーがあって中々にいい。
この曲では、余り大仰にクラシック的なアプローチは見せず、どちらかと言うとモロにメタルよりなモノをメインにして構成されている。
特に注目したいのが、リフプレイにおける刻み。
かなり強引に刻み倒していくプレイではあるが、正確さよりもパワーを重視したプレイスタイルが心地良い。

4:Evil Eye

これも非常にヘヴィメタルを意識した曲構成であり、特にイントロからメインフレーズに移行していくコード進行などは王道と言えるだろう。
一方、途中からがらりと曲調を変えて、大袈裟にクラッシクアプローチを見せたりもして、意外性を持たせようと試みている点もある。
強引な転調などもあり、曲展開に起伏を持たせているが、プレイスタイルはどこを切ってもメタル。
ここが重要な点であって、彼の場合、クラシックの中にメタルがあるのではない。
あくまでもメタルの方法論に、クラシック要素を持ち込んだという点を忘れてはならない。
それを如実にあらわすのが、2:54から始まるメタル的アプローチによるオルガンとのソロバトルだろう。
ここで注目しておきたいのは、決してバトルそのものではなく、バッキングに於ける方法論であり、ここだけ取り出せば「ジューダス・プリース」といっても通用しそうなストレートさである。
これこそがイングウェイのイングウェイたる所以であろう。

5:Icarus's Dream Suite Opus 4

超・名曲である。
彼にしては珍しく、オーケストレーションの組み立ての段階からクラシック手法を大胆に取り入れており、このアルバムの中では、一際クラシックな曲展開を誇る。
音の組み立てだけではなく、音色、リズム、そういった部分からクラシックを意識させる。
しかし、一方ではメタル的なアプローチもしっかりと取り込まれていて、3分半あたりからの展開においては、この手法を基礎にして曲が展開していく。
ここで注目したいのが、速弾きを排除したメロディラインの美しい組み立て方だ。
二本のギターによる、ハーモニーとユニゾンを生かした非常に美麗な旋律が心を打つ。
一方的にテクニックに傾斜しがちな彼の評価であるが、この美しい旋律を奏でる事が出来るセンスも決して忘れてはならない。

6:As Above, So Below

バロックを彷彿とさせるオルガンソロから始まるヴォーカルナンバーだが、これは非常にオーソドックスにヘヴィメタルしている。
それ故に、逆に取りたてて注目すべき点がある訳ではない。
しかし、このメタル的手法の纏まりは、流石に作曲者としての水準の高さを示していると言えよう。
いい曲である事は間違いはないが、このアルバムにおいては、やや意外な印象を持つ曲ではある。

7:Little Savage

どちらかと言うと、メタル的なアプローチを前面に押し出したインストだ。
余りクラシック的な要素を出さず、純粋に重さとハードさで勝負していく印象のある曲ではある。
こういう言い方どうかとも思うが、「キャプテン・ネモ」を連想するナンバーである。
ソロプレイと言うよりも、曲展開のストレートさがそう感じさせる原因であろう。
しかし、ラストまでその調子で引っ張らないあたりが流石はイングウェイではある。
途中からの強引な展開は中々に意外でありながらも、思わず耳を傾けたくなるカッコ良さを持っていて、一筋縄ではいかないものを感じさせるに充分だ。

8:Farewell

アルバムの最後を締めくくる、1分前後の小作品。
1曲目のブラック・スターのフレーズを生かしながら、アコギ一本で奏でるだけの、言わば「レクイエム」的位置付けの作品である。
さして言及の必要は感じない。

 

■さて、散々言及してきた事ではあるが、イングウェイのスタイルは「クラシックが基礎」になっている訳ではない。
あくまでも基礎にあるのはメタルであり、そこにクラシックの要素を的確に取り入れることが上手いのである。
勘違いされがちではあるが、曲展開自体を聴いてみれば、非常にメタルである事が良く分かる筈だ。
無論、それは誰にも真似できないハイレヴェルであるからこそ成り立つものであって、この後、たくさんのパチモンが現れては消えていったことが、それを証明している。
この「的確な別要素の配置」という手腕は、のちのメタルにおいては重要なファクターとなっているような気がする。
であれば、イングウェイは現代メタルの方法論の先駆者的存在であったのではないだろうか。


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